新生産システム推進対策事業
新生産システムモデル地域・年度(平成21年度)
奧久慈八溝
対象流域一覧
奥久慈・阿武隈川流域(福島県)、八溝多賀流域(茨城県)
森林・所有者情報データベース事業運営者
東白川郡森林組合
担当コンサルタント
(株)山田事務所
|
|
間伐作業が完了した現場 |
福島県南部と茨城県北部が対象地域。平成18年度に大型製材工場を整備し、自社山林部門も有する有力国産材製材メーカーの協和木材(福島県塙町)が中心となり、地域材の安定供給システムの構築、高品質製材品の供給力強化に取り組んでいる。
一方、モデル地域内の森林組合では、成熟する資源を背景に林産事業を核とした経営にシフトすることを視野に入れ、集約化の推進や機械化による素材生産力の強化に取り組んでいる
|
■ 西白河地方森林組合が機械化システム構築へ
西白河地方森林組合(福島県白河市)は昭和43年に広域合併で発足した。スタッフは、職員が6名、作業班員が9名。作業班員については緑の雇用事業を活用して若返りを進めており、平成15年度以来、現在まで6名を新規に雇用している。
同組合はもともと造林型の森林組合で、間伐もほとんどが伐り捨てで行い、林産事業はごくわずかしか実施していなかった。ただ、今後は森林資源が成熟度を増してきていることなどから、組合員所有山林の集約化を進め、高性能林業機械を駆使した搬出間伐に経営の柱をシフトしていくことを計画している。
そうした経営転換の取り組みの一環として、高性能林業機械を活用した低コスト素材生産システムの構築に取り組んだ。
同組合の従来の生産システムは、定性間伐によって劣性木をチェーンソーで伐採し、林内作業車を利用して搬出するというもの。素材生産経費は直接経費1万円/m3を含めて1万1,000円程度/m3かかっていた(間接経費は選木・区域設定等の経費)。
本事業では、プロセッサとフォワーダを駆使した素材生産システムを導入し、従来方式とのコスト差を検証した。
■ 3カ年にわたって機械化効果を検証
平成18年度はスギ41年生の林地で4カ所の伐採区域(0.5haが3ヵ所、0.8haが1カ所)を設定。間伐率(定性、本数比)は0.5hの3カ所がそれぞれ20%、30%、40%、0.8haの区域が50%。間伐率20%の区域の素材生産経費は1万1,600円/m3(うち直接経費は8,200円/m3)。間伐率40%の区域がもっとも経費がかかり、1万3,400円/m3(うち直接経費は9,800円/m3)を要した。搬出材積は4区域合計で121m3。
19年度は3.2haの事業地を、(1)上-層木を20%間伐、(2)下層木を30%間伐、(3)3残――1伐の列状間伐--(間伐率は材積比)の3区域に分けて実施。それぞれの素材生産経費は、(1)が8,600円/m3(うち直接経費は6,200円/m3)、(2)が1万1,800円(うち直接経費は8,800円/m3)、(3)が9,000円/m3(うち直接経費は7,200円/m3)となった。搬出材積は3区域合計で270m3。
20年度は3.44haの事業地を上層木伐採および下層木伐採の2区域に分けて実施(間伐率は路網開設分も含めて42%)。このケースでは幅員3m、路網密度350m/haの高密路網開設も合わせて実施したが、いずれの区域も素材生産経費は1万2,000円/m3(うち直接経費は9,900円/m3)と、従来システムとほとんど変わらない経費がかかった。搬出材積は2区域合計で306m3。
経費が圧縮できなかった原因は、道端からグラップルで伐採木を引き出すことにしてワイヤー掛けの補助員を付けたものの、地形が急峻なため、ワイヤー掛け現場と道端との連携がうまく行かず、その分の経費が掛かり増しになってしまったことにあった。
■ 林産事業強化が課題
前述したように、同組合にとっては今後、林産事業をいかに強化するかが課題となっている。そのためには集約化の取り組みも強化する必要があるが、材価が低水準で推移しているため、間伐で所有者の収益を確保するのが難しい情勢。そのため、今後は上層木間伐に対する森林所有者の理解を得る工夫、低コスト素材生産システムのスキルアップを図り、所有者の負担を軽減できるように努めることにしている。