新生産システム推進対策事業
新生産システムモデル地域・年度(平成21年度)
宮崎
対象流域一覧
五ヶ瀬流域、耳川流域、一ツ瀬川流域、大淀川流域、広渡川流域
森林・所有者情報データベース事業運営者
宮崎県森林組合連合会
担当コンサルタント
日本能率協会コンサルティング
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外山木材の新工場 |
当モデル地域では、強力な生産力と高い販売力を兼ね備えた有力製材工場がひしめく都城地区を中心に国産材製品の安定供給体制の構築に取り組んでいる。
地域の森林資源は成熟度を増しており、昨今は中目クラス以上の中大径木の出材が増加している。そのため、各工場ではそうした径級の大きな原木を効率的に製材するためのシステム構築を進めている。
国内屈指の足場板メーカーであり、KD製品の有力メーカーでもある外山木材(株)では、平成20年度に新工場を整備。21年度から稼働を開始し、順調に業績を伸ばしている。
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■ 原木消費量が順調に増加
外山木材の新工場は敷地面積が2万8,000坪、工場建屋は7,200m2。ラインを効率的に管理するために壁を設けないオープン型としているのが特徴。平成20年度中に新設工事を終え、21年4月1日から本格的に稼働を開始した。
初年度の原木消費量は80m3/日の計画だったが、「100m3は行くと思っていた」という外山正志社長の予想通り、3カ月後には120m3/日に達した。その後も消費量は増加基調で推移し、21年度末近くには150~180m3/日をコンスタントに消費している。年間原木消費量は当初計画の2万m3を大幅に上回り、4万m3近くに達することが見込まれている。
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中大径木を効率的に加工するために新工場を立ち上げた |
■ 高品質製品を高能率に製造する新システム
工場を新設したのは、地域で出材量が増加している中目以上の中径木を高能率で加工する体制を整えるため。製品には柱角や平角、羽柄材などの人工乾燥材。品質を安定させるために天然乾燥も適宜組み合わせている。
製材ラインは機械メーカーと協力して独自に開発したもの。ラインに原木を投入する前にスタッフが原木の目合いや色合いを確認し、その時の受注状況も考慮しながら角挽きにするのか、あるいは板挽きにするのかを決定、発光チョークで印を付ける。その印をセンサーが読み取ることにより、ライン投入後の製造プロセスを無人で管理するという、高品質製品を高能率で製造することが可能なシステムを実現した。
木取りについては、芯の部分から柱角や梁桁用の平角を取り、側板から羽柄材を取るのが基本だが、質の高い製品を製造できるように、個々の原木の品質に即した木取りを徹底している。
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オリジナルの製材ライン |
さまざまな製品が高能率で製造される |
■ 社員教育などソフト面の取り組みにも注力
「新生産システムがスタートする以前から、新工場の構想は検討し、準備を進めていた」という外山社長。ライン設計だけでなく、「販売なしに生産なし」という売れる製品作りに徹した製造を行えるようにする判断力や、売れ筋製品を見極める営業力を身につけさせるための社員教育にも力を入れ、社内の隅々まで社の方針を行き渡らせることに腐心してきた。こうしたソフト面での取り組みが、新工場の運営を早い段階で軌道に乗せることができた背景にあることは見逃せない。
また、同社は、販売に際して商社を介さずにプレカット工場やハウスメーカーなどに直接販売していることも特徴。これは「商社を入れると自分で情報を取ることができなくなる。末端需要の情報をいかに得ることができるかが経営に大きく影響する」という外山社長の考えがあるため。
新工場の稼働開始後は、原木の消費量こそ順調に増えていったものの、出荷状況は21年7月ごろまでは芳しくはなく、天然乾燥状態での在庫製品を2カ月分ほど抱えていた。しかし、「工場開設前からマーケットリサーチを入念にやっていた」ことも奏功し、8月からは引き合いが強まり、9月以降は「こなしきれないほどの注文が来た」という。外山社長は「景気が悪かったこともかえってよかった。景気が良かったらどの工場も仕入れを強めるので、原木の手当てに苦労しなければならなかっただろう」と話している。
同社の原木調達先は、立木を購入して素材生産も手掛ける同地区の製材業者、個別の素材生産業者、原木市場の3種類。全体で45%前後は直送での調達が実現しており、新工場に限っては100%直送が可能な体制を整えている。
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さまざまな製品が高能率で 製造される |
最新の人工乾燥システムで 質の高い製品を製造する |