新生産システム推進対策事業
新生産システムモデル地域・年度(平成19年度)
宮崎
対象流域一覧
五ヶ瀬流域、耳川流域、一ツ瀬川流域、大淀川流域、広渡川流域
森林・所有者情報データベース事業運営者
宮崎県森林組合連合会
担当コンサルタント
日本能率協会コンサルティング
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スイングヤーダを活用した 集材作業 |
スギ素材生産量日本一(100万m3)の供給力と、効率的な生産ラインと人工乾燥機を備えた有力製材工場による生産加工能力とを生かし、乾燥性能の高いスギ製材品を大口顧客向けに安定供給するシステムづくりに取り組んでいる。そのため、各社の乾燥能力を精査するとともに、今後、間伐比率を高めつつ、原木を安定供給できる体制整備も進める。
山元から製材工場への丸太供給については、既存の原木市場を活用した効率的な配送システムの構築に取り組んでいる。
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■ 大口顧客向けに乾燥材の大ロット供給体制を構築
外材供給不安などからハウスメーカーや大手プレカット工場など大口顧客からの引き合いが増えつつあることを踏まえ、平成19年度には当モデル地域における乾燥材供給能力の調査を実施した。
それによると、人工乾燥施設を保有している事業体数は約60事業体で、そのうちの上位16社で全体の70%近くをカバーしている。それら事業体の乾燥施設の能力から計算すると、当モデル地域における乾燥材の最大供給能力は現状が年間25万m3で、各事業体の施設整備計画を勘案すると、22年度には30万m3、24年度には34万m3に拡大することが予想される。
また、現在の取引先への供給を続けながら増産可能な乾燥材の数量は、現状で5万m3となっている。これが22年度には7万m3程度になることが見込まれる。このことから、差し当たりは5万~7万m3の乾燥材を取りまとめ、ハウスメーカーやプレカット工場などの大口顧客に安定供給するサプライチェーンの構築を検討する。
そうした製品生産の裏づけとなる、原木の安定供給体制についても、新生産システムの計画数量を達成するためにどの程度の増産が必要になるのかのシミュレーションを実施した。
それによると、当モデル地域においては、主伐と間伐の割合が7:3と主伐の割合が高く、現状のままなら18%の増産で計画数量を達成できる。しかし、今後、間伐を推進し、素材生産全体に占める間伐の割合を40%まで高めると仮定した場合は、34%の増産を実現しなければ計画数量を達成できない。そ
のため、今後は高性能林業機械化などの生産体制整備を強力に推進する必要がある。
■ 中間土場の活用やストックヤードの設置で原木供給の効率化を目指す。
宮崎県造林素材生産事業協同組合連合会では、山元から製材工場に対して原木を安定的に供給する体制を構築するため、平成18、19年度と林業生産革新的取組支援事業を活用し、中間土場の開設や輸送の効率化に取り組んだ。
18年度は中間土場の開設による低コスト供給体制の構築を進めた。現場に隣接した大型トレーラーが入る場所に中間土場を設け、大ロットでの輸送を可能にしたもの。
19年度は、原木市場を活用した輸送の効率化を進めた。新生産システムでは山元から製材工場への直送を進めることになっているが、当モデル地域では原木市場を核とした原木流通への依存度が高く、さらにほとんどの製材工場が直材のみの供給を希望しているため、仕分け能力を備えた市場をストックヤードとして活用するシステムの構築に取り組んだもの。
具体的には、県森連共販所に特定製材工場の原木ストックヤードを設け、市場の仕分け能力を活用して指定された径級・品質の丸太をストック。それを工場の稼働状況に応じて引き取るという流れ。ストックヤードでの仕分けを効率化するため、あらかじめ山元で原木を末口径16cm下と18cm上とに仕分けておく。原木がストックヤードに持ち込まれた時点で売買が成立したとみなす。
運送業者は山元の生産現場とストックヤードの間をピストンで輸送し、ストックヤードから工場への輸送も適宜行う。従来のように単に工場から市場に原木を引き取りに行くだけのためにトラックを動かしていたのとは異なり、山元とストックヤードとの間の輸送にストックヤードから工場までの輸送も組み込むことで、輸送費のコストダウンを図る。市場での選別費も縮減が見込まる。
このような18、19年度の取組みを生かし、当モデル地域では、(1)山元から工場に直送(2)山元に隣接した中間土場を活用(m3)市場に設けたストックヤードを活用--+の3種類のシステムを適宜使い分け、協定に基づく原木の安定供給体制の構築を進める。
なお、上記のストックヤードを活用した取組みに参画している素材生産業者の日北木材(北郷町)では、ハーベスタ、スイングヤーダ、フォワーダ各1台にグラップル3台を加えた体制で年間5,100mm3の素材を生産している(従業員7名。うちトラックとの兼務が1名)。
同社では、今後は間伐にも積極的に取り組みつつ、森林資源を短伐期で適切に回転させる仕組みづくりも進めていく方針だ。その際、中間土場やストックヤードの活用で実現したコストダウン効果を再造林経費などの形で山元にフィードバックし、山元での体制整備につなげていくことにしている。
森林・所有者情報データベース事業 宮崎県森林組合連合会
■19年度中に3件の売買が成立
対象林地の募集については、新聞広告も活用。説明会は23回開催し、延べ440人が参加。ただし、新聞広告に応じて持ち込まれた情報は、比較的林地の規模が小さく、境界情報も不明瞭で集約化が困難な場所が多い。
調査は地域の森林組合に依頼しているが、やはり境界が不明瞭であったり、資源状況が貧弱であったりというケースが多い。利用者にとってメリットのある情報を整備するためのデータ収集をいかに効果的に行うかが課題のひとつになっている。
これまでに48件、約60haの登録希望を受付けた。このうち8件、16haを登録、公開している。公開データはそれぞれ問合せ期限を設定することにしている。
利用者は27事業体。購入を希望する物件が見つかると、利用者はデータ管理者である県森連にメールで照会。県森連から所有者を紹介してもらうことになる。19年度中3件の売買が成立した。