新生産システム推進対策事業
新生産システムモデル地域・年度(平成20年度)
秋田
対象流域一覧
米代川流域、雄物川流域、子吉川流域
森林・所有者情報データベース事業運営者
秋田県森林組合連合会
担当コンサルタント
秋田県立大学木材高度加工研究所
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プロセッサによる枝払い・ 玉切り作業 |
当地域では秋田スギ人工林材を安定的に供給・利用し、林業の振興および木材業の活性化を図り、地域材利用を拡大することを目指している。
そうした中で、昨今の景気低迷は地域内事業体の経営を直撃しており、全体的な利用量が伸び悩む状況にある。しかし、山元から製材工場への直送量や協定取引量は順調に増加しており、事業の効果は着実に上がってきている。
20年度は県北地域で山元仕分けの効果を検証する実験を実施し、コストダウンにつながること、地域内需要の掘り起こしに効果のあることなどが確かめられた。
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■ 山元仕分けの実験を実施
大館北秋田森林組合では、原木の生産コストを引き下げるために20年度は山元で仕分けを行い、工場に直送する実験を実施し、その効果を検証した。同組合では4~5年前にプロセッサを導入していたが、こまでは「チェンソーによる伐倒、枝払い、玉切り→グラップルによる積み込み→フォワーダによる搬出」というシステムでの作業がほとんどで、プロセッサの稼働率が上がらず、その効果を実感できずにいた。
そこで、今回の実験では、プロセッサを現場でフル稼働させた場合の効果も検証した。実施場所は北秋田市内の官行造林地および国有林で、面積は9.41ha、林齢は52年生。樹種はスギで、わずかだが、アカマツやナラ、カラマツなども含まれていた。立木材積は3,780m3で、造材材積は3,056m3。比較的形質が良い木がそろっていたため、造材歩留まりが良く、製材向けの材もかなり採ることができた。
仕分けは長さを2m、3.65m、4mの3種類に分類。2m材のうち、良質なものは建具や加工板の製造工場向けとし、低質材は合板向けとした。3.65m材は末口16㎝上~中目で一般製材用、4m材は末口24cm上~34cmで厚さ30㎜の厚板用にそれぞれ仕分けした。
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山土場でのグラップルによる仕分けとフォワーダへの積み込み |
■ コストダウン効果を確認
同森林組合は林産事業の取扱量が年間4万m3で、原木の総販売量が同10万m3(このうち共販事業での販売が2万m3)。これまでは山元で生産した原木をすべて搬出してから仕分けしていた。しかし、それでは経費がかかり増しになり、全般的に市況が低迷している中で出荷側、買い手側の双方が利益を確保するのが難しくなる。原木の品質についても、この地域は以前は高品質材が多く、すべて「良い物」という前提で玉切りをする習慣があった。しかし、昨今は並材の割合が高くなっており、品質に応じて綿密に仕分けする必要性が生じている。
今回の実験では山元での仕分けがコストダウンにつながることや、プロセッサを活用することの効果が確かめられ、今後、製材工場向けに原木を安定供給するためのノウハウを蓄積することができた。一部の製材工場向けの原木は、含水率を多少でも引き下げるため、仕分け後に山元で桟積みし、3カ月間そのままにするという方式も試行的に取り入れた。含水率は100%が85%にというように、15%程度しか下がらなかったものの、材ごとのバラつきが小さくなる効果が見られた。
また、従来は地元の県北向けの販売だけでなく、県中央部の秋田地域向けにも2,000円/m3の運賃をかけて原木を出荷していたが、山元で適切に仕分けを行うことにより、地元で需要の掘り起こしができるようになり、運賃負担分を山元に還元することが可能になった。
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丸太のまま桟積みして含水率のバラつきを低減させた |
丸太の運材 |
■ 直送、協定取引とも順調に増加
当モデル地域では20年度に有力製材工場および原木市場の経営破たんがあり、地域材の利用量も景気低迷の影響で減少傾向にある。県中央部で計画されている大型製材工場の建設も具体的な見通しが立っていない状況である。
そのような中で、原木の直送割合は17年度時点の50%が20年度は65%(見込み)と順調に上昇し、協定に基づく取引量も17年度はまったく実績がなかったものが、20年度は23万6,000m3(見込み)と拡大している。
こうした流れを今後も継続させ、目標に近づけていくため、システム事業体間の連携を一層強めていくことにしている。
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皮剥ぎ丸太の運搬(沓澤製材所) |
積雪期の土場風景(沓澤製材所) |