新生産システム推進対策事業
新生産システムモデル地域・年度(平成20年度)
~経営基盤強化、事業発展に向けた成果が求められるステージに~
林野庁の「新生産システム」が平成18年度にスタートしてから3年間が経過しました。この間、全国11カ所のモデル地域では、森林経営・施業の集約化による素材生産コストの削減や生産力の強化、山元から製材工場への原木直送システムの構築、加工施設の整備などの取り組みをそれぞれの計画にしたがって進めてきているところです。
ただ、林業・木材産業をめぐる情勢は必ずしも芳しくなく、特に20年度後半からは米国サブプライムローンの破たんに端を発した世界的な景気低迷の影響で、住宅着工が減少し、木材価格も低迷するなど、川上から川下に至る各段階の関係者がいずれも厳しい経営環境に直面する事態となっています。新生産システムの各モデル地域も例外ではなく、各システム事業体はこの不景気を何とか乗り切ろうと、さまざまな努力を重ねています。
このように周辺環境はけっして良いとは言えない状況の中、新生産システムによる取り組みとしては、20年度までに加工関係の施設整備が終了し、地域材を原料とした製材品の生産力が大幅に強化されました。特に製材ラインについては、高速化・高能率化をテーマとした最新設備がいくつもの工場で導入され、製材加工のイノベーションとも言えるような技術革新が進行しています。
一方、川上の素材生産サイドの状況を見ると、木材市況が低迷する中で苦戦は免れていないものの、これまで進めてきた施業集約化や団地化に一定の成果が見え、路網整備や伐採搬出技術のレベルアップも進んでいます。
こうした成果を踏まえ、今後は各段階の関係者がより密接に連携することによって地域材の生産・加工・流通システムをスムーズに機能させ、各主体が取扱量を増やしつつ、着実に収益を確保できるようにしていくことが求められます。これまでに蓄積したノウハウや整備した施設を駆使し、それぞれが経営基盤を強化し、事業を発展させていくことができるかどうか。具体的な成果が求められるステージがいよいよ幕を開けることになります。
本書では、今後の展開の基盤となる各モデル地域の取り組みについて、20年度実績を中心にまとめました。広く関係者のご参考になれば幸いです。