新生産システム推進対策事業
新生産システムモデル地域・年度(平成21年度)
岡山
対象流域一覧
高梁川流域、旭川流域、吉井川流域
森林・所有者情報データベース事業運営者
津山市森林組合
担当コンサルタント
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)
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超高強力ポリエチレン繊維ザイル |
ヒノキ乾燥材の有力メーカーである院庄林業(津山市)を中心とし、地域の林業・木材業界全体の活性化を推進するのが本モデル地域の目的。山元では、素材生産効率アップの取り組みを進めるとともに、仕分け技術の向上に取り組み、原木の直送体制を構築する。
システム事業体のひとつ、前田林業(株)(大阪府伊丹市)では、生産している原木の80~90%を直送で出荷。仕分け技術の向上や搬出作業の効率化に取り組んでいる。
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■ 原木の80~90%を直送、他力本願から脱却
前田林業は岡山県、三重県、和歌山県に合計で約560haの山林を保有する林業事業体である。年間素材生産量は1,500~1,600m3。現場作業は直営で行っており、スタッフは正社員が2名と嘱託が1名の合計3名である。
同社では従来、生産している原木のすべてを市場に出荷していた。現在は出材量の80~90%を直送で製材工場や合板工場、チップ工場などに販売している。販売にあたっての商流部分は、専門商社を経由している。
施業方法は4残2伐の列状間伐で、スイングヤーダ、プロセッサ、フォワーダのいわゆる3点セットを活用している。
前田多恵子専務は、直送に切り替えたことによるメリットとして、「市場の状況がよくわかるようになった」ことを挙げる。「従来は製材工場やそれ以降の動きがわからなかったが、わからなくても何とかなった。他力本願な経営だった。しかし、今後は自分で情報を集めて判断しなければならない。価格も対等な立場で交渉しなければならない。そうやって対等性を確保する一方で、協力関係も結ばなければいけない」。
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現場で繊維ザイルとワイヤーを引き出す(左端の人が引いているのが繊維ザイル) |
下げ荷の実証調査 |
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繊維ザイルが損傷し、その一部が滑車に付着している。 繊維ザイルと同じ材質でできた滑車に変えるなどの対策が必要 |
■ 山土場仕分けやトレーラー運搬で効率アップ
同社では、平成19年度に林業生産流通革新的取組支援事業を活用し、山土場での仕分けと電子端末を使用した寸検、運送トラックの大型化によるコストダウンの調査を実施した。
仕分けの種類は、スギ、ヒノキがそれぞれ4種類ずつの計8種類。材の流れは、(1)山土場仕分け後に原木市場に出荷、(2)山土場で仕分け、寸検を行い、中間土場までは15tトラックで運び、土場で30tトレーラーに積み替えて製材工場および合板工場に出荷、(3)山土場で仕分け、寸検を行い、15tトラックで製材工場および合板工場に出荷――の3パターン。山土場での寸検にはハンディーターミナルを使用した。
山土場での仕分けコストは平均1,162円/m3となり、市場での中間手数料を削減することが可能になった。ただし、引き続き、技術の向上、寸検の誤差を少なくするための改善方法の検討、精度とスピードの両立--といった改善を図る必要がある。
30tトレーラーの使用については、運送コストを削減することはできたものの、中間土場での積み換え時間の短縮、積み込み・積み下ろし時間の短縮、トレーラーが山土場まで直接進入するためのアクセス路確保--を今後、検討する必要がある。
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チョーカーワイヤの中を通っているのがチョーカースライド (右上の金具がロープフック) |
■ 繊維ザイルの実用性を検証
20年度には林業生産流通革新取組支援事業を活用し、超高強力ポリエチレン繊維ザイルとチョーカーワイヤーを使用したウィンチ集材に取り組んだ。
繊維ザイルは軽量高強度で作業員の負担を減らすとともに安全性を向上させ、作業効率を高める効果が期待できる。チョーカーを取り付けたワイヤーは荷掛けと荷外しがワンタッチで行える。
事業の結果、繊維ザイルは労働負担の大幅な軽減が図られたとともに、乱巻きなどのトラブルが発生しづらく、トラブルが発生したとしても処理時間が短く済むことがわかった。ただし、摩耗による強度低下が心配され、安全基準づくりが必要なことなどの課題が明らかになった。
チョーカーについては、荷掛け時間は従来の玉掛けワイヤーと大きな差はなかったものの、荷外し時間は短い傾向が見られた。ただ、取り付け器具が重いことなどのネックも明らかになり、今後、最も効率が上がる使用方法を検討する必要がある。
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繊維ザイルが右に動くと荷を掛けた輪がしまる仕組みだ |