新生産システム推進対策事業
新生産システムモデル地域・年度(平成19年度)
中日本圏域
対象流域一覧
岐阜県内全流域、愛知県内全流域、三重県内全流域
森林・所有者情報データベース事業運営者
岐阜県森林組合連合会、愛知県森林組合連合会、三重県森林組合連合会
担当コンサルタント
(株)山田事務所
|
|
スイングヤーダによる集材とプロセッサによる造材のセット作業 |
岐阜、愛知、三重各県の全流域で素材生産の効率化、原木の直送を推進し、地域材の効率的な供給体制を構築する。
素材生産では愛知県内でスイングヤーダを活用した3点セットの導入を進めているほか、三重県内では松阪飯南森林組合をモデルに高性能林業機械を活用した作業システムの導入を推進。また、愛知県では植付け本数を大幅に減らし、間伐をせずに成林させることで育林コストの縮減を図る施業方法を試験的に導入した。
加工事業体は西村木材店(三重県松阪市)1社。同社では20年度に最新設備を備えた新工場を開設する。
|
■ 1,000本/haの粗植で育林コストを軽減
林業生産活動のトータルコストダウンを図る観点から、愛知県内の施業地において、植付け本数を従来の1/3程度に減らすとともに、ヘキサチューブによる苗木の保護を行うことによって、育林コストの大幅な縮減を図る取組みを革新的施業技術等取組支援事業によって実施している。
一般にスギ、ヒノキ人工林の植付け本数は、吉野地域や尾鷲地域といった密植を基本とする地域以外は3,000本/ha程度とされている。しかし、この方式では成林させるまでに下刈り、除間伐、枝打ち等の育林作業が欠かせず、多大な労力とコストを要する。
そこでこの取組みでは、育林作業の省力化、低コスト化を図るため、植付け本数を1,000本/haとし、植栽した苗木を高さ1.8mのヘキサチューブで保護する施業を導入した。
1,000本/haとしたのは、間伐などの手入れを適切に実施して30~40年生にまで育てた段階の本数をターゲットにしたため。本取組みでは、最初からこの本数で植付けることにより、植付け後30~40年間は間伐を行わずに推移を見守る(枝打ちは実施する)。また、ヘキサチューブで苗木を保護することによって、下刈りも省略する。
本モデル地域における主要産地のひとつとなる三河地域の植付け本数は、もともと1,000本/ha程度だったとも言われており、取組みの結果、効果が認められると判断されれば、導入箇所を拡大し、普及を図る。なお、通常の1/3程度の粗植とすることにより、植付け後20年程度はかなりの肥大生長が期待できる。
|
植付け本数を減らし、ヘキサチューブで保護することにより、 育林コストを縮減する試み |
■ スイングヤーダ利用の3点セットとロングアームハーベスタ+フォワーダの生産システムを導入
愛知県では山元の素材生産において、スイングヤーダ、プロセッサ、フォワーダを組み合わせる、いわゆる3点セットによる低コスト化を進めるとともに、ロングアームハーベスタとフォワーダによる生産も試験的に導入している。
3点セットによる施業では、2残1伐の列状間伐を推奨している。スイングヤーダの索張りは30mを基本に現場の状況に応じて50~100mにも対応。作業路は幅員2.5mとし、200m/haの高密路網とする。開設費用は500~1,000円/ha程度とし、路網自体は簡易なものとする。
素材生産コストは従来の1万1,000円/m3を6,000~7,000円/m3にコストダウン。全般的にコストをかけずに施業し、その分を林家に還元することを目指す。なお、現在、愛知県内には3点セットが合計6セット導入されており、1セットの年間施業面積は40haを想定している。
ロングアームハーベスタとフォワーダの組み合わせは、列状間伐のほか、小面積皆伐の施業地にも導入することを想定。小面積皆伐での施業(18年度に実施)では、ヒノキ80~100年生の高齢級林分で平均15.90m3/人日の生産性を達成した。1人1日当たりの人件費を2万円、減価償却費を1万円と仮定した場合の固定費は1,887円/m3となった。また、19年度の実証では、ロングアームハーベスタとフォワーダを活用した間伐作業で10.3m3/人日、ロングアームグラップルとプロセッサ・フォワーダを活用した間伐作業で8.7m3/人日の生産性を記録、その有効性を確認した。
■ 西村木材店への原木直送を推進
原木流通の効率化に関しては、原木をサテライト土場に集約し、大型トラックを利用して西村木材店(三重県松阪市)に直送することでコストダウンを図る取り組みを実施。また、ホルツ三河(愛知県新城市)などの原木市場で同社向けの原木を仕分けし、付売りで販売する取り組みも進めている。
これらによって、まとまった量の原木を効率的に安定して供給する体制を構築することを目指す。
なお、同社では20年度中に最新製材設備を導入した新工場を開設する予定である。
森林・所有者情報データベース事業 愛知県森林組合連合会
■グーグルマップ上で基本情報を視覚化
平成18年度は78ha、19年度は141haで登録用の現況調査を実施、20年度中の公開を目指している。林分調査では、樹冠、樹幹、林床の写真を撮影するほか、樹種、樹高、胸高直径、枝下高、枝打ち高、曲がりの程度、傷の有無を調査する。
公開するデータベースでは、グーグルマップを活用し、画面上にポインタを合わせると面積や樹種、胸高直径などの基本情報が表示されるような形を想定している。
三重県森林組合連合会
■造材本数の見込みデータを提示
松阪飯南森林組合の管内で平成18年度は60ha、19年度は102haの調査を行い、19年度中に公開。
公開するデータベースはテキスト形式とし、位置情報はグーグルマップを利用した簡易なものとしている。詳細図面については、所有者が特定される恐れがあるため、利用者からの問い合わせに応じて適宜提示する。
林分の状況については、標準地当たり4枚の写真を公開。材質については、曲がり率(強、中、弱)、病虫害率、枝打ち高などのほか、造材した場合の見込み本数も提示する。