新生産システム推進対策事業
新生産システムモデル地域・年度(平成19年度)
鹿児島圏域
対象流域一覧
大隅流域、南薩流域、北薩流域、姶良流域、熊毛流域
森林・所有者情報データベース事業運営者
鹿児島県森林組合連合会
担当コンサルタント
鹿児島大学
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施業を集約化し、路網を整備する |
林業関係者と森林組合、流通業者に関しては、県内のほとんどの事業体が参画。山元の素材生産力強化による安定供給体制の構築が主要テーマで、高性能林業機械化や小規模森林所有者の集約化を進めている。
原木取引きにあたっては、鹿児島県森林組合連合会が中心となって、複数の原木市場の在庫情報を集積し、原木を定時、定量、定価格で販売するシステムを確立。システム事業体の森林組合では、直送によるコストダウン効果の実証が進められている。
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■ 複数原木市場の在庫情報を集積
~鹿児島県森連~
鹿児島県森林組合連合会は複数の原木市場の在庫情報を集積し、顧客の注文に応じて原木を定価販売する「原木流通情報センター」を平成19年9月1日にオープンした。
最近は製材工場の規模拡大が進んでいるほか、大量の原木を必要とする合板工場や集成材工場が国産材の取扱量を増やしていることもあって、原木の取り引きが大口化する傾向にある。ところが、単体の市場では取り扱い数量に限界があり、大口顧客が求める数量を安定的に確保することが難しい。そこで、複数の市場の在庫を一体的に管理することによって、まとまった量の原木を定時・定量・定価格で販売するシステムを構築し、顧客との取り引きをスムーズに行おうというのがセンター開設の目的である。
在庫情報を集積する原木市場は、県内の森林組合系統7共販所と鹿児島県銘木市場で合計8市場。センターでは、それぞれの共販所や原木市場が集荷して仕分けた原木の椪積み情報をインターネットを通じて集積する。一方、購入者の製材工場などは、支望する品質、数量(月間の希望数量など)、価格、支払方法などをセンターに提示して購入を申し込む。注文内容のうち、品質については、直径や傷・腐れの有無、曲がりの程度(矢高)などを指定できる。ただし、特定の共販所や市場の材を希望したり、色合いや目詰まりを指定することまではできない。調整の上、注文内容が確定したら契約となる。
センターでは、各共販所・市場からの情報をもとに在庫状況を確認し、顧客から注文された原木を各共販所・市場の土場で確保する。土場渡しの場合は、どの共販所・市場に原木があるのかを顧客に伝え、引き取ってもらう。センターの方がトラックを手配して、顧客が指定した場所に持ち込む場合もある。代金の決済はセンターが代行する。出荷者と買い手の双方にメリットがあるように、販売手数料は通常の市売取り引きの場合よりも低く抑えてある。
将来的には立木段階あるいは山元土場段階で出材予定数量を事前に把握し、顧客との契約をもとに、原木を山元から直送するシステムの確立も目指すことにしている。そのため、鹿児島県森連では、10カ所のモデル区域を設定し、山元で検収、椪積みなどを行う際の問題点を検証することにしている。
■ 原木直送のコストダウン効果を実証
~薩摩東部森林組合~
薩摩東部森林組合(さつま町)では、平成18年度に高性能林業機械を活用した素材生産・搬出システムを導入し、山元の生産現場のコストダウンを実現した。19年度は全森連の施業集約化・供給情報集積事業を活用し、森林施業プランナー2名を育成、小規模所有者が所有する林地の集約化に着手した。さらに山土場やサテライト土場を活用して原木を仕分けし、顧客に直送する場合のコストダウン効果を実証する事業も実施した。
従来の素材生産作業は、チェーンソーで伐倒・玉切りを行い、スッキダで木寄せしてトラクタで搬出するというものであったが、新たな作業システムでは、チェーンソーで伐倒したものをウインチ付きグラップルで集材し、プロセッサで玉切りを行っている。これにより、平均素材生産コスト(山土場に集積するまでの
経費)が9,000円/m
3から6,000円/m
3に縮減された。
施業集約化の取り組みについては、既存の路網をベースに、概況調査と詳細な現地調査を行って施業プランを作成し、施業提案会の開催・戸別訪問・ふるさと森林会議開催などを通じて施業の実施を働きかけている。
原木直送システムの実証については、林業生産流通革新的取組支援事業を活用。同森林組合は原木共販所(柴尾木材流通センター)を有し、従来は市場の土場で選別機を活用して原木の仕分けを行い、市売り方式で顧客に販売していた。それを市場の土場に持ち込まずに仕分けを行って顧客に直送するシステムを確立するため、(1)1カ所で大ロットの出材が見込める場合は、生産現場の山土場で選別仕分けを行い、トラックで製材所に直送する(2)複数の分散した小規模現場から出材される原木を新生産システム用の土場に集積し、選別・検収後に大型トレーラーで輸送する--の2システムについて、コストダウン効果を実証した。
事業の実施に当たっては、精度の高い比較を行うため、市場の選別機・土場を活用する従来のシステムによるコストを把握した後、同じ丸太を使って上記(1)、(2)のシステムを採用した場合のコストを実証。分析結果をもとに、実際の現場への導入を検討する。
森林・所有者情報データベース事業 鹿児島県森林組合連合会
■立木売買システムとして自立採算も視野
これまでの事業実績は、平成18年度が調査面積約83ha、登録面積約60ha(対象区域=大隅町森林組合及び南大隈森林組合管轄地域)、19年度が調査面積約102ha、登録面積約60ha(同=曽於地区森林組合および曽於市森林組合管轄地)。調査は県森連と組合が合同で実施した。対象林地を掘り起こすため、新聞広告も利用している。19年9月に16事業体に対してパスワードを配布した。
利用の流れは、(1)パスワードを使ってホームページ上でデータベースを閲覧(2)購入希望物件について、県森連に打診(3)現場確認(4)購入希望者と所有者が交渉するための調整を県森連が実施。実際の交渉は当事者同士が直接行う--というもの。
将来的にはデータベースの運用経費を売買手数料でまかなうことを視野に入れ、設置要綱に所有者と購入者の双方から手数料を徴収できる旨を明記している。