新生産システム推進対策事業
新生産システムモデル地域・年度(平成19年度)
熊本
対象流域一覧
白川・菊池川流域、緑川流域、球磨川流域、天草流域
森林・所有者情報データベース事業運営者
熊本県森林組合連合会
担当コンサルタント
NPO法人FORI森林誌研究所
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くまもと製材の製造ライン |
有力集成材メーカーの銘建工業(岡山県)が熊本県森林組合連合会をはじめとする熊本県内林業・木材業者と設立した「協同組合くまもと製材」が中核となり、地域材を大量に供給・加工する体制を構築する。
年間原木消費量は当初5万m3、将来的に10万m3を目指す。製造品目はスギの集成材用ラミナと間柱。ヨーロッパ製の大型乾燥機を配備し、乾燥性能が安定した製品を製造する。ともに銘建工業が引き取り、ラミナは岡山本社でスギ集成材の原料に利用、間柱は同社ルートで販売する。
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■ 年間原木消費量10万m3の大型工場を整備
協同組合くまもと製材(あさぎり町、理事長=中島浩一郎・銘建工業社長)は平成19年5月に発足。銘建工業、熊本県森連、地元有力木材企業の原田木材のほか、地域の森林組合、素材生産業者、民間原木市場など24事業体が参画している。工場着工は19年9月中旬。20年3月末に完工し、テストランを経て6月から本格稼働を開始する予定。
原木消費量は当初1シフト30人体制により、年間5万m3でスタート。スタッフ30人のうち、1/3を岡山の銘建工業本社から派遣し、製造ラインを効率的に動かす体制を構築する。平成22年度中にはスタッフを50人体制に拡充し、2シフト体制に移行。原木消費量は年間10万m3とする。
原木は地域のスギ材を調達。熊本県森連が窓口となって各組合員と協定を締結し、さらに県森連がくまもと製材と協定を締結する形とする。県森連はくまもと製材の稼働状況や原木のストック状況(くまもと製材の土場の原木収容能力は8,000m3)を把握し、協定先の組合員と密接に連絡を取りながら、原木を安定供給する。調達する原木は末口24cm上、元口は50cmまで。長さは3m材を中心とし、4mも受け付ける。矢高は3cmまでとして、直材と小曲がり材を主体に集荷する。
従来、九州地区では4m採材が主流で、特に中目クラス以上になると、通常は4m材を取るのが一般的であった。しかし、くまもと製材では3m間柱や3m管柱用のラミナを製造するため、山元には3mで採材してくれるよう積極的に働きかける。3mに採材する方が、直材が増えて単価面でも山元有利になることなど、そのメリットをアピールしていく方針だ。
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平成22年度には年間原木消費量を10万m3にまで引き上げる計画 |
■ ヨーロッパ製大型乾燥機(150m3タイプ)を10基設置
製造品目はスギの集成材用ラミナと間柱で、当初は間柱を中心に製造する。これは銘建工業の岡山本社がスギラミナの乾燥用に大型の人工乾燥機(容量100m3)を新たに3基導入し、さしあたりは地元でのスギラミナ調達に力を入れることにしているため。
製材ラインはツインバンドソー2基をメーンにツインセンターカット、シングルセンターカット、横バンドソー、マルチリップソーを配備。ツインバンドソーを2基としたのは、製材効率を高めるため。
製材工程は、ツインバンドソーで側板を落とし、その後、シングルセンターによるセンターカット、ツインセンターによる3ピース割り、横バンドソーによる丸み落とし、リップソーによる小耳落としなどの工程を部材の形状に応じて組み合わせ、ラミナと間柱の原板を製造する(一次製材)。この時点では、材は耳付きのままで、歩留まりは約63%。
一次製材で製造した板材は、桟積みして人工乾燥にかける。耳付き材のまま乾燥機に入れるのは、乾燥に伴う変形応力を出し尽くさせて品質の安定を図るため。最終的な製材歩留まりは51%を予定している(KD、プレーナー仕上げ後)。
乾燥機はオーストリア製の蒸気式乾燥機(中温タイプ)で、容量150m3タイプを当初は10基設置する。乾燥温度は80℃で、ワンクール9日間で含水率14%以下に仕上げる。おおむね月間3.5回転する計算で、月間のKD能力は5,250m3となる。当初の1シフトによる年間5万m3の原木消費量(月間約4,000m3)からすると、乾燥能力に余力があるため、周辺の製材工場から未乾燥の板材を購入して人工乾燥処理することも検討する。将来的には、原木消費量を10万m3ペースに引き上げるのに合わせて同タイプの乾燥機を6基増設する計画。
乾燥の熱源としては12トンボイラーを導入しており、燃料にはバークとプレーナー屑を活用する(24時間稼働)。チップは製紙メーカーなどに販売する。
■ 間柱は「ラミナ並み」の乾燥性能がセールスポイント
製造する間柱は厚さ30㎜を主体に45㎜厚、27㎜厚の3タイプ。すべて無垢材でFJ加工は行わない。ラミナの場合は30㎜厚とし、無垢のほか、幅はぎタイプも製造する。含水率は間柱、ラミナとも14%以下とする。
製品は間柱、ラミナとも銘建工業が購入。30㎜厚のラミナは集成材(4プライの集成管柱)の原料とし、プレーナーをかけて27㎜厚に調整する(集成材の場合は積層接着の直前にプレーナーがけする必要があるため)。間柱は同社の販売ルートを通じてハウスメーカーやプレカット工場に販売。「集成材ラミナと同程度の乾燥性能」をセールスポイントとして拡販を図る。
森林・所有者情報データベース事業 熊本県森林組合連合会
■所有者に手取額の見込みを提示
平成18年度に69ha、19年度に90haで調査を実施し、20年3月に公開。19年度は新聞広告を掲載するといった方法も活用し、対象林地を集めた。
利用者は21事業体。物件に対する問合せは県森連が受付け、現場案内・説明も県森連が担当する。販売価格については、材種や相場を踏まえ、立木価格の見込み額を提示する。搬出経費については、林地の状況や業者の力量で異なり、そこに競争が生じると想定している。一方、所有者に対しては、搬出価格の資産を含め、手取額の見込みを内々に提示しておく。
今後は20年度に300ha、21年度に400ha、22年度に500haの追加公開を目指し、森林所有者に対するデータ公開の働きかけや現地調査を進める。募集に当たっては自治体の広報等も活用する。