新生産システム推進対策事業
新生産システムモデル地域・年度(平成19年度)
奧久慈八溝
対象流域一覧
奥久慈・阿武隈川流域(福島県)、八溝多賀流域(茨城県)
森林・所有者情報データベース事業運営者
東白川郡森林組合
担当コンサルタント
(株)山田事務所
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原木消費量15万m3/年を目指す 大規模製材工場 |
有力国産材製材メーカーであり、自社の山林部門を通じて山元から原木を直接調達している協和木材㈱が中心となり、地域材を大量に供給・加工するシステムの整備が進められている。同社では平成18年秋に新たな大型製材工場を開設し、規模拡大を図ったほか、自社山林部門も強化し、原木の安定確保に努めている。
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■ 年間原木消費量12万m3の大型工場を整備
協和木材㈱(福島県塙町、佐川広興社長)が平成18年秋に開設した新工場は、年間原木消費量が12万m3、製材品生産量が6万m3(製品歩留まり50%)と、国産材製材の単独工場としては国内最大規模である。総投資額は約15億円で、自己資金と金融機関からの融資で調達した。
製材ラインはノーマンツインバンドソーが3台、大径材用のツインバンドソーが1台、台車が3台というラインナップで、ノーマンツインバンドソーは午前8時~午後5時半・午後6時~午前3時半の2シフトで操業している。
製品は柱角が主体で、ほかに間柱や梁桁も製造している。人工乾燥(KD)材の比率は50%で、天然乾燥材が25%、未乾燥材が25%となっている。天然乾燥材の場合は伐採後に葉枯らし乾燥を施した原木を製材している。
柱角はすべて含水率と強度を測定し、KD材と天然乾燥材についてはそれらのデータを明示している。含水率については、KD材が20%以下、天然乾燥材が25%以下と規定している。天然乾燥材の含水率と強度が表示されているケースは他社ではあまり例がなく、同社独自の取り組みといってよい。これは同社が人工乾燥に取り組む以前から実施していたことであり、それだけ製品の品質管理を重視していることがうかがえる。
同社では、すべての製品にシリアルナンバーを印字している。これも品質管理の一環であり、固有のナンバーを印字することにより、個々の製品の製造履歴と工場出荷時の品質を出荷後にも確認できるようになる。これなら万一、出荷先でトラブルが発生しても、材の性能に見合った使われ方がされていたのかをチェックして、責任の所在を明確にすることができる。地産地消にこだわる顧客に丸太の生産現場がどこだったのかを示すことにも活用できる。
販売先は問屋や市場、商社など卸業者向けと、プレカット工場やハウスメーカーといった大口需要者向けとが40%ずつ、ホームセンターが10%、邸別納材などのその他が10%となっている。大消費地の首都圏に近いという立地が強みで、夕方までの注文なら翌朝には指定された場所に配送することができる。
■ 木屑焚きボイラーで乾燥コストを低減
乾燥機は減圧蒸気式(中温タイプ)が2基と高温蒸気式が2基。容量は各タイプとも80m3である。
高温蒸気式は表面割れを防ぐドライングセット処理の専用機として使用している。20年度には容量80~100m3クラスの中温蒸気式をさらに5基導入することを計画している。これは板材や羽柄財の乾燥能力を増強するためである。背景には、森林の成熟度が増し、
原木の大径材化が進んでいるために板材の生産量が増加していることがある。一方、需要面でも羽柄材に関して人工乾燥材の需要が増加しているという事情がある。
乾燥の熱源には製材端材とプレーナー屑を燃料とした木屑焚きボイラーを活用している。佐川社長によると、この新工場を建設した主要な目的の一つに、木屑
焚きボイラーを導入したことがあるという。
原油価格が高騰し、将来的にも高値推移が見込まれる中、需要が増加している人工乾燥材の製造コストをいかに引き下げるかが、製材工場にとって経営上の大きな課題になっている。そのために最近は木屑焚きボイラーが導入されるケースが各地で相次いでいる。
ただし、火を点けたり消したりしていたのでは効率が上がらないため、ボイラーを24時間稼働させてエネルギーコストを引き下げなければならない。そうなると工場もそれに見合った規模にする必要がある。つまり、木屑焚きボイラーを導入して人工乾燥コストを引き下げるためという理由もあって、大型の製材工場を整備したのである。
■ 自社山林部門で年間8万m3の原木を生産
同社は自社の山林部門として、小規模素材生産業者を組織化した「協栄会」という伐採搬出専門部隊を有する。従来は健康保険や労災保険、退職金共済の事務手続きを代行するための任意団体であったが、平成19年5月に協同組合として新発足した。19年度には生産体制を強化するため、新生産システムの取り組みの一環として、フォワーダ3台とプロセッサ1台を導入した。
協栄会の会員数は50人。月間7,000m3の丸太を山元から直接調達している。このうち5,000m3を協和木材に供給、他は地元の原木市場に出荷している。
施業方法は35?50年生なら間伐、60年生程度なら皆伐と、林地の状況に合わせて選択している。最近は10年に1回程度の割合で間伐を繰り返すことにより、森林の資源的価値を高める長伐期施業を選択するよう森林所有者に勧めるケースが増えている。間伐の方法は樹形や生育状況を踏まえて選木する定性間伐で、列状間伐は行っていない。
伐採までの流れは、(1)山林部のスタッフによる選木→(2)所有者の了解→(3)伐採予定木の毎木調査→(4)見積もり提示→(5)契約→(6)伐採搬出--となる。間伐の場合は同じ林地で繰り返して施業することになるため、各所有者ごとの施業データを蓄積し、次回の施業時に前回のデータを踏まえて効率的な作業が行えるようにしている。森林所有者との取引はすべて立木買いで、委託生産は行っていない。
森林・所有者情報データベース事業 東白川郡森林組合
■19年9月1日に200ha分を公開
平成19年9月1日付けで公開開始。対象面積は18年度分が40ha、19年度分が160haで合計200ha(一部、西白河地方森林組合管内の林分を含む)。9齢級以上のまとまりがあり、5年以内の売却を希望している林分を対象とし、所有者に公開を働きかけた。5年間の公開予定面積は680haである。
公開情報は所有者ごとのデータで、全体の8割が5ha未満となっている。境界確定などに利用する機器として18年度にGPSを導入した。データベースの利便性を高めるため、検索システムを導入するための改良を施している。
利用者から情報の照会があった場合は、提示された価格をあらかじめ所有者に伝え、その上で両者を引き合わせる仲介役を組合が担う。実際の売買はあくまでも各所有者の判断において行う。