新生産システム推進対策事業
新生産システムモデル地域・年度(平成21年度)
秋田
対象流域一覧
米代川流域、雄物川流域、子吉川流域
森林・所有者情報データベース事業運営者
秋田県森林組合連合会
担当コンサルタント
秋田県立大学木材高度加工研究所
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東北木材の製材ライン |
豊富な資源を有し、今後、供給増が見込まれる秋田スギ人工林材の利用を促進するため、山元の生産力強化や製材工場を中心とする顧客との連携強化を進める。それらにより、地域の基幹産業である林業の振興および木材業の活性化を図る。
秋田産地では、昨今の景気低迷下で、山元の素材生産、川中の製材加工とも苦戦を強いられている。特に製材業界に関しては、国内有数の産地であるにもかかわらず、人工乾燥への対応の遅れや12尺材が中心という特殊性などもあり、他産地との競合に遅れを取る場面も見られた。
新生産システムによる取り組みでは、山元からの原木安定供給の推進とともに、人工乾燥の促進などを通じて製品の品質向上に努め、秋田スギ製品の競争力強化を図る。
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■ 出荷地域は関東方面が約5割
東北木材(株)(能代市)は秋田県を代表する有力製材工場のひとつ。年間原木消費量は平成21年が2万m3弱、22年は2万2,000m3を目指す(能力は2万4,000m3/年)。
調達している丸太は長さ3.65mのいわゆる12尺材が主体。全体の50%は森林組合系統からの仕入れで、そのうちの3分の1は直送で手当てしている。それ以外は民間の素材生産業者からの仕入れが全体の30%で、それらはすべて山元からの直送となっている。
製材ラインは役物生産用の台車が2台、並材量産目的のツインバンドソーが1台。製造品目は、構造材が25%(芯持ち柱角が12%、割角が3%、他は間柱)、加工板、板割、ヌキなどの板材が60%、他はタルキなどの小割材。製品の歩留まりは47%。プレーナー屑やオガ粉は畜産敷料向けに出荷している。
人工乾燥機は中温蒸気式が3基(容量は合計65m3=柱換算)で、現状では板類の乾燥に使用している。
製品の販売先は製品問屋および製品市場が中心。地域別では関東向けが全体の50%を占めている。現状、構造材の人工乾燥には対応していないので、プレカット工場向けの出荷はない。
■ 人工乾燥機を増強し、製品の品質向上を図る
同社では今後、人工乾燥を積極的に行い、製品の品質向上を図るとともに販路の拡大に取り組む。
人工乾燥については、21年度中に人工乾燥機4基を新規に導入する予定。乾燥機のタイプは、高温蒸気式が1基、中温蒸気式が3基。高温タイプは柱角と平角に利用、中温タイプは間柱に利用する。
これらの乾燥機を導入することによって、ここ1~2年の間に製品の人工乾燥材比率を現在の20%から50%にまで引き上げることを計画している。さらに22年度にはグレーディングマシーンを導入し、強度表示のニーズにも対応できるようにする予定だ。このようにさしあたりは品質向上に全力を挙げ、23年度以降は増産を図ることにしている。
こうした取り組みを進めることを通じ、従来は他産地の製品との競合で遅れを取りがちだった秋田スギの芯持ち柱角の販路開拓を図る。
秋田スギ芯持ち柱角については、これまで、(1)12尺造材が一般的な地域特性もあって、3m材に対応できないこと、(2)秋田スギ特有のやわらかさがユーザーから敬遠されたこと、(3)秋田スギは高樹齢材が多いため、芯持ち柱角用の原木は5番玉など樹冠に近い部分からの造材になり、トビグサレ材が多いこと??といったマイナス要因があり、それらが販路開拓を図る上での足かせとなっていた。同社では、人工乾燥化や3m材への対応などを通じ、競争力強化を図る。また、人工乾燥能力強化にともなって、新たにKD平角も商品化する。
一方、板材については、品質が比較的安定している2番玉や3番玉の中目材丸太からの製材となることもあり、品質面でもそれなりの評価が得られる製品を従来から製造してきている。今後はKD化を進めることで拡販を図る。
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役物割角製品の仕上げ挽き作業 |
従来、角物は天然乾燥が主体 |
■ KD材の地元への拡販も
販売地域としては、従来から主力の関東方面への出荷については、引き続き安定販売に取り組むほか、KD材生産を強化することに伴って、KD材の販路開拓を進め、東北エリアでの拡販にも力を入れることにしている。
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乾燥機を増強し、KD材の生産能力を強化する |
高樹齢の丸太が多い |