新生産システム推進対策事業
新生産システムモデル地域・年度(平成19年度)
高知中央・東部
対象流域一覧
嶺北仁淀流域、高知流域、安芸流域
森林・所有者情報データベース事業運営者
高知県森林組合連合会
担当コンサルタント
富士通総研(株)(三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株))
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屋内と現場の研修を繰り返し、 必要なノウハウを身に付ける |
山元の木材供給体制を構築することを最大目標とし、高知県、高知大学などの支援も得ながら森林組合をはじめとする林業事業体の能力アップを図っている。ベースとなるのは施業集約化で、これについては森林組合の役割と位置づけ、綿密な指導を行ってている。
施業方法は高密路網をベースとした長伐期多間伐施業を志向。路網の設計・施工能力の向上を図っている。また、伐採・搬出作業方法については、現在の手法の効果を再検証し、適切化を図る。
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■ 現場トレーニングで木材供給体制を構築
本モデル地域では、木材の供給体制を構築することがすべての前提になるとの基本方針を定め、山元の森林施業・木材生産に関する能力アップを図っている。具体的には、森林組合による施業の集約化をベースに、路網開設と林業機械の有効活用による低コスト生産体制を確立する。森林組合については、経営能力を向上させることを目指し、技術レベルを引き上げるとともに、役職員の意識改革にも重点を置いて各種指導を行っている。
取り組みは、専門家による講義や事業体同士の意見交換といった屋内研修と、現場における実技研修を繰り返すトレーニング形式で進められている。それによって技術を身につけるとともに、そのベースとなる考え方や発想の仕方といったソフト面での進歩も促し、最終的には、より良い方向に向けての努力が各組織で自律的になされるような形に持っていく。
現場トレーニングにおいては、路網に関しては設計のあり方や開設技術等について、細部にわたる検証を行い、必要な点について逐一指導していく。伐採~造材~搬出といった素材生産作業に関しても同
様で、機械の効率的な利用の仕方や無駄のない作業システムをいかに実現するかなどについて、綿密に指導していく。
実際の森林施業については、当該箇所の森林の状況を的確に把握・判断した上で、その森林をあるべき姿に仕立てていくには、どのような施業が必要なのかを検討することから取り組みをスタートする。
その際、目標とする林型をイメージできるようにするため、現況を正確に把握する観察眼、施業によってもたらされる効果・影響を確実に予想する能力を身に付けられるうよう指導する。
指導体制としては、コンサルタントの富士通総研が総合調整を行い、提案型集約化施業で実績のある日吉町森林組合が実際の作業システムを担当している。また、高知県や高知県立森林技術センター、高知大学なども参画し、工程調査や生産コストチェックをバックアップするとともに、指導を行っていく。
■ 高密路網をベースに長伐期施業を実施
施業は基本的に高密路網方式による長伐期多間伐施業を志向する。
施業集約化の流れは、(1)地域森林の状況を概観した上で、今後5~10年間の管理に関する基本戦略を策定→(2)当面取り組むべき森林の林分を調査→(3)路網設計、施業方法・作業システムを決定→(4)経費を見積もって所有者に働きかけ、施業を集約化→(5)現場に指示し、作業を管理→(6)結果確認、木材販売、清算--を基本とする。
この中で伐採、搬出の作業については、現状ではスイングヤーダを活用した列状間伐を志向する事業体が多く、その有効性について改めて検証し、適切な施業方法をアドバイスすることにしている。
一方、路網の整備に関しては、現場トレーニングを重ねることで、着実に技量が向上している。設計に当たって留意すべき点(ヘアピンカーブの処理、法面高さの管理等)への理解も深まり、現場でのマーキング等によって施工担当者に的確に指示する習慣も根付き、設計・施工の意思疎通がなされている。
コスト管理に関しては、作業ごとに記録した作業日誌、機械別の燃料消費量、稼働時間等を集計。実施区域全体の生産性・コストを把握して分析を加え、改善点を見出して指導を行っている。
■ 銘建工業参画の加工事業体整備は延期
加工面の取り組みでは、当初は有力集成材メーカーである銘建工業(岡山県)が参画する土佐板挽専用製材協同組合(仮称)の設立が19年度中に予定されていたが、住宅需要の落ち込みによる木材需要の低迷、製品価格の下落などの諸要因によって見送られ、20年度の製材施設整備も先送りされることになった。
同社では、同様に協同組合方式で国産材製材に参入した熊本県における事業(協同組合くまもと製材)効果を検証しつつ、本モデル地域における取り組みについては、最低1年間延期することを決定している。
その一方で、20年度からは銘建工業と高知県森連、高知県素生連との間で原木供給に関する協定取り引きが試験的に実施される予定。それを通じて物流効果を検証し、必要な改善策を講じる。
森林・所有者情報データベース事業 高知県森林組合連合会
■現地調査は県森連が外部に委託して実施
18年度はプログラムの設計を進め、19年度に土佐町内の174カ所、116haについて取りまとめの上、公開している。
データは森林簿をベースとしつつ、現地調査で境界を確認するとともに現況を把握し、精度を高めている。
調査は県森連が測量会社に委託して直接実施している。これは調査を実施するに当たり、第三者性を確保してトラブルを事前に回避できるようにしているためである。
公開された情報に対する利用者からの購入希望については県森連が受付け、所有者の意向を確かめつつ、当事者同士による直接交渉ができるようになるまで双方の意向を調整する。基本的に所有者の意向を最大限尊重するという方針を堅持することにしており、調査に入る段階でそのことをよく説明して理解を得ることにしている。