新生産システム推進対策事業
新生産システムモデル地域・年度(平成19年度)
大分
対象流域一覧
大分中部流域、大分南部流域、大分西部流域、大分北部流域
森林・所有者情報データベース事業運営者
大分県森林組合連合会
担当コンサルタント
NPO法人FORI森林誌研究所
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日田市森林組合の共販市場 |
大分西部流域の日田地域を中心に素材生産から原木流通、製材加工に至る各段階での取り組みを強化し、地域材の安定供給・加工システムを構築する。
原木流通に関しては、日田地域は全国有数の原木集散地であり、多数の原木市場が立地していることから、その集荷能力と選別仕分け機能を活用しつつ、協定に基づく効率的な原木流通システムを整備する。
加工面では、内部割れがなく、色艶も良い「大分方式乾燥材」の製造を推進し、独自ブランドとして販路拡大を図る。本モデル地域では、新生産システム関連の事業を活用した製材工場の施設整備をすでに終え、早期に生産体制を整えている。
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■ ヒノキ製品の有力メーカーとして販売促進に注力
~佐藤製材所~
西日本を代表する大手ヒノキ製材メーカー。新生産システムを活用して新工場を建設し、19年10月に移転した。年内いっぱいをかけてラインの調整を行い、20年の年初から本格稼働を開始している。
製材ラインはツインバンドソーが新規に導入した2台と旧工場で使用していた1台の合計3台。ほかに横バンドソー1台、耳摺り機3台など。人工乾燥機は容量40m
3タイプが4基、35m
3タイプが1基の合計5基。いずれもほぼ5日で1回転させている。
工場の稼働時間は1シフトで8時間/日。原木消費量は150m
3/日で、月間では3,500m
3、年間では4万m
3程度の計画。
製品はプレカット向けの土台を主体に月間2,100m
3を製造(歩留まり60%)。人工乾燥材生産量は月間500m
3で、そのうち100m
3が大分方式乾燥材。基本的に受注生産体制をとっている。
大分方式の製造スケジュールは乾燥機で4日間処理し、含水率22~23%に落とし、その後、2~3カ月天然乾燥を行うというもの。今後は大分方式乾燥材の比率を徐々に高めていく方針。
同社の特徴は、製造工程の綿密な管理。その日に生産する品目・数量のプランを各自が把握し、ラインを無駄なく稼働させる。ツインバンドソーには必ずオペレーターが付き、丸太品質に応じた生産を徹底する。製品は同じ品目でもグレードを細かく選別し、顧客ニーズに合わせるとともに、品質に応じた
販売価格を確保できるようにしている。
原木の確保については、製品の販路を促進することが原木を安定的に調達することにつながるとの考えに基づき、今後は製品の販売に力を入れる方針。
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丸太の品質に応じた生産を徹底する乾燥材とJAS製品の供給を推進 |
■ 乾燥材とJAS製品の供給を推進
~日田十条~
18年度に製材ラインと乾燥設備を増設、20年度から本格的な増産体制に入る。
生産体制はツインバンドソーが3台、人工乾燥機が5基(容量50m
3、高温タイプ)。このうちツインバンドソー1台と乾燥機2基を新生産システム関連事業で整備した。製造品目は柱角を中心に間柱やタルキなど。20年の年間原木消費量は前年の3万m
3から2割増産し、3万6,000m
3を目指す。
製品のうち乾燥材の占める割合は6~7割(柱、間柱、小割類)。柱角は大分方式乾燥材が主体で、含水率を20%以下に仕上げた製品を出荷している。JASの活用にも積極的で、乾燥材のほとんどはJAS製品として出荷している。
同社は平成12年に産業廃棄物の中間処理施設の認可を取得しており、建築解体材の処理も手がけている。受け入れた解体材は断面の大きな無垢材はパルプ材向け、小断面材やボード類が混入しているものはボード原料に、それ以外は自社のボイラー燃料にと、用途別に分別した上でチップ化している。
■ 製材工場との協定取引きを開始
~日田市森林組合
19年度からシステム事業体である製材工場との協定取引きを開始している。
同組合の原木共販市場の取扱量は18年度が5万m
3で、19年度は約6万m
3の計画。これを5年後には7万5,000m
3に引き上げることを計画している。
新生産システムに基づく協定取引きは5工場との間で19年7月からスタート。19年度の協定量は各工場1,200m
3ずつで合計6,000m
3。取引方法は、協定先の製材工場から希望する原木の形状を提出してもらい、それを踏まえて協定用の原木を仕分けし、ある程度の量が溜まったら協定先に連絡して引取りに来てもらうというもの。価格は直前の市売り実績を踏まえて決定する。通常の市売り取引きではないため、椪積み手数料の一部を協定先に還元している。
従来の市売りのみの経営では、出材した原木が落札されなければ売れたことにならず、受身の商いだった。しかし、協定取引きは、山元の生産段階から、売り先を意識した素材生産が可能になり、ある程度の価格決定イニシャチブを持てるとあって、大きな変革として捉えている。同組合では、共販市場を経営している近隣の森林組合と協議会を立ち上げ、原木の生産情報を共有化することも目指しており、今後も原木流通拠点としての地位向上に努める。
山元の素材生産体制としては、現在、約100名の作業班を抱えているほか、森林整備センターという組織を立ち上げて月給制の現場職員22名を雇用している。センター職員は道づくりと伐採の双方を担えるトータルプランナーとして養成しており、人員も40名程度にまで増強することを目指している。
森林・所有者情報データベース事業 大分県森林組合連合会
■19年度までに650haを調査し公開
これまでの事業実績(調査・登録面積)は、平成18年度が453ha、19年度が201haで合計650ha。18年度は日田市、日田郡、玖珠郡の各森林組合管内で、19年度は佐伯広域、山国川の両森林組合管内で、それぞれ調査を実施した。対象林地もそれぞれの森林組合に確定してもらっている。公開は19年度末。利用者としては20事業体にパスワードを発行する。
物件について問い合わせがあったら現地の森林組合に連絡。基本的に森林組合が所有者とデータベース利用者との間に立つという構図になる。連合会では問い合わせがあった段階で、データベース上に「交渉中」と表示する。
データベース利用者には、売買契約が成立した場合は、その旨の報告義務があることを了解してもらうことを条件にパスワードを発行しており、それによって掲載情報の適正管理を図る。